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インカ道:帝国を築いた古代のハイウエイ (BBC-Magain, July 2, 2015)

http://ichef.bbci.co.uk/news/800/cpsprodpb/17369/production/_84018059_18022612090_97ff64c19d_k.jpg

 紀元前、南アメリカ大陸の背骨をなすアンデス山脈で独特の文明が勃興した。その後、数世紀にわたり、独自に磨かれた技術・文化が継承されて、発展を遂げ、やがて大帝国が1200年頃に誕生する。インカ帝国だ。
 この文明の伝統的な特質は、農業技術と土木技術にある。水を無理なく誘導し、これを効率的、集中的に使用する工夫が、ひな段畑の随所に施され、やがて、その水の管理技術が土木建設にも応用されて行く。
 
 ペルーの世界遺産「マチュ・ピチュ(Machu Picchu)」遺跡は、年間数百万人が押し寄せる、人気の高い観光スポットだ。そこから、さらに約1,000m高い標高3,400mの厳し山岳地帯の地クスコ(Cusco)をインカ帝国は、首都とし、そこを中心として、現在のアルゼンチン、ボリビア、チリ、コロンビア、エクアドル、ペルーの6カ国にまたがる広大な地域に、全長39,000kmの交通網「インカ道(Inca Road)」を張り巡らす。

 その道の建設から数百年を経た今でも、なお、インカ道の主要部は人々に利用されている。「インカ道の成功の秘訣(key to success)は持続可能性(sustainability)」とは言え、まさに、驚異的な土木技術だ。

 道づくりは、その土地・現場の状況(local conditions)を良く考えて進められている。近くの資材(local materials)を利用し、現場の地形(landscape)にふさわしい工法を選択する。これを基本とし、急傾斜地帯(steep terrain)では、早く雪が溶けるように石段を積み、さらに、上の斜面から道に流れ落ちる水のエネルギーを分散させて、石の浸食(erosion)を防止する工夫が施される。必要とあらば、斜面に「水抜き孔」を掘った。いずれも、現在の土木工事で採用されている工法である。インカでは、すでに1,000年以上も前に開発されていたのだ。

 インカにとって、「道」は単なる道(physical road)ではない。「道」は宇宙の中に存在する道(cosmological road)である。そこには生命があり(living load)、心が宿る(The road has a spirit.)。この考え方に基づいて、インカ道の随所に祭壇(alters)が設けられているそうだ。

 インカの人々が、「自然に感謝し、報いる」という強い信念で作り上げたインカ道に、やがて悲劇が起こる。1532年、スペイン人が海岸に上陸し、このインカ道を利用して、インカ帝国の金と銀を血眼になって探し回るのだ。
 時は、インカ帝国が、内紛(internal fighting)と天然痘(smallpox)に苦しみ、その勢力が衰退し始めた時代であった。
                                   (写真は添付のBBC Newsから引用)

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