時代は、今から5億年前のカンブリア紀(Cambrian Period)のこと、地球太古の海で大異変が起こった。「カンブリア生命大爆発(Cambrian Life Explosion)」だ。このとき、現代のほとんどの動物の祖先(門)が、爆発的に誕生した。
表題の「ハルキゲニア(Hallucigenia)」も教科書に出てくる「三葉虫」も、この時代に現われた。生命爆発の原因として、色々な説があるが、真相は不明、謎だ。
なぞは「ハルキゲニア(Hallucigenia)」にもあった。この生物の化石は100年前に発見されてはいたが、どちらが頭で、どちらが尻尾なのか判然としないのだ。どの化石も、頭が欠けて発見されたからだ。
ところが、最近、カナダのBurgess頁岩(Burgess Shale)から、ほぼ完璧のハルキゲニアの化石が発見された。きちんと頭がついている。体長は2cm足らずで、人の髪の毛よりも細い体をし、背中には幾本もの鋭く長いトゲ(dorsal spines)があり、複数のその足の先は、薄い爪のようになっている(stick-like clawed appendages)。
電子顕微鏡(electron microscope)で注意深く、その顔を覗くと、研究者と目が合い、ニタリと笑ったように見えた。秘密を隠して、何やら、はにかんでいるようにも見えた、と研究者は記す。さらに、口の中を調べると、またも驚く。なんと口の中の歯が、のどから胃まで続いていたのだ。一度捕らえた獲物は、腸まで噛み送る仕掛けになっていたという。
さて、姿こそ小さいが、この異次元の世界からやって来た、怪物のようなハルキゲニア。その子孫が、有爪(ゆうそう)動物カギムシ(velvet worm, 学名Onychophora)の仲間だ。むろん。5億年も世間ずれすると、すっかり、その背中のトゲも取れて、性格も随分と円くなったようだ。
(写真は添付のBBC Newsから引用)