テッポウウオの技:昆虫めがけて水てっぽう (BBC-Earth, June 21, 2015)
「サクランボの種飛ばし」に競技があると聞いた。少々品性に欠けるとは思ったが、単なる「遊び」だ。
しかし、テッポウウオ(archerfish)の水てっぽう(water jet)は単なる遊びではない。東南アジアの熱帯域に広く生息するこの魚にとって、水てっぽうは弓矢に類する、れっきとした狩りの道具だ。英語のarcherfishとは、「射手魚」のこと。
アメリカWake Forest大学の研究者Morgan Burnette、Miriam Ashley-Rossの両氏はテッポウウオの生態を調査し、その結果を「The Journal of Zoology」に発表した。
それによると、テッポウウオの「狩りの技」は卓越している。
水面上の木の枝や葉の上に留まる昆虫、クモなどの獲物を発見すると、できるだけ近づき、標的との距離を正確に見定める。そこで、体の姿勢と口元を微妙に調整し、撃ち落とせる噴出圧を計算して、水ジェットを発射しているというのだ。
テッポウウオの体長は約25cm。観測によると、この魚が獲物を狩るときの「間合い」は、体長の2.3倍から5.8倍であることが明らかになった。距離にすると最短0.5mから最長1.5mとなる。
さらに、匠の技は「水ジェット」にも隠されている。一般に、弓から放たれた矢は、空気抵抗を受けるため、標的に当たる前にその威力が失われるものだ。しかし、テッポウウオの水ジェットのパワー損失は、わずか15%。効率の良い水ジェットを一瞬にして作りだし、水の屈折率も考慮した最適な発射角度、噴出圧を決めているとすれば、まさに、狩りの名手(expert archer)と言わざるを得ない。
すごい「さかな」がいたものだと驚く。テッポウウオの技術は工学分野の「Water Jet」の研究に応用できそうだ。
(写真は添付のBBC Newsから引用)