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ヴァンパイヤ草:「富めるものから取り、貧しきものには与える」 (BBC-Earth, June 9, 2015)

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  のっけから、名せりふ、「富めるものから取り、貧しきものには与える」。江戸末期の天保三年(1832)獄門に処せられた「鼠小僧」次郎吉の決め口上。

  表題の記事によると、「ロビン・フッド(Robin Hood)」も同じようなことを言ったようだ。日頃、なかなか日の当たらない生活を強いられ、右往左往しながら、明け暮れる庶民にとっては、西であろうが東であろうが、思いは、今も昔もみな同じ。「何で、富めるものは富めるのだ」。 

 この、「世の理不尽」に毅然(きぜん)と立ち向かう植物がある。リナントゥス・ミノール(Rhinanthus minor [学名]、ゴマノハグサ科オクエゾガラガラ属)だ。イギリスでは一般には、little yellow rattle(ヒメキイロガラガラ[直訳])として知られ、この種の仲間は、世界中の草原に見られるという。

 さて、この「義賊」、背丈までが「鼠小僧」に似て、小さい。もともとは、ほんの数cmの草丈だ。しかし、草原で我がもの顔で振り舞う雑草にとりついて、その根から吸血鬼(vampire)のように養分を吸い取ると、背丈をぐんと伸ばす。これで、雑草のはびこりにブレーキがかかる。雑草に寄生するが、この植物自体も光合成(photosynthesis)で養分を蓄えるので、半寄生植物(hemiparasites)だ。雑草に寄生すると、どんどん生育し、仲間を増やす。

 イギリスのLincoln大学のLibby John研究チームは、このVampire草の生態系調査を進め、興味深い研究結果を発表した。内容の詳細は「The Journal of Ecology」に示される。

 その論文によると、vampire草の寄生には、自然界の営みの「わけ」があったという。 傍若無人な雑草を懲らしめ、周りの、ひ弱な草花に十分な日の光と空間を与える役目だけではなかった。このvampire草が自生する草原では、自生しない草原に比べて、昆虫などの生物(毛虫、カブトムシ、カタツムリ、ダンゴムシ、カリバチ、クモな)の個体数が数倍にのぼった。つまり、植物にとっても、昆虫にとっても、vampire草の生える草原は、居心地の良い生息環境(grassland community)であり、まさに「桃源郷」であったのだ。

 その理由は、まだ、不明。おそらくは、vampire草が創り出す「桃源郷」では、他の草原では存在し得ない、スポット空間の微気候(microclimate)変化が起きているのかも知れない、と専門家は見ている。 (写真は添付のBBC Newsから引用)

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