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カートリッジ・インクの価格はなぜ高いか?:巧妙な心理商法 (BBC-Business, April 8, 2017)

 

 

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 インクジェットタイプのプリンターは数千円で購入できる。しかし、そのインクはすぐになくなるし、インクカートリッジの価格は結構高い。それは、なぜか。また、カプセルコーヒーの抽出機はお手軽値段に設定されているが、肝心のカプセルの値段は、これまた高い。
  この背景には、ビジネス用語で「two-part pricing( 2部価格制)」と呼ばれる「商いの心理戦術 (psychological tactics)」がある。この商法を始めに考え出したのは、USAの「King Camp Gillette (キング・キャンプ・ジレット [1855-1932] )」だ。

 1800年代後半のことだ。、当時、髭剃り用のカミソリと言えば、頑丈なつくりで、高価だった。もちろん切れ味はすくに悪くなる。これに目をつけたGillette は、カミソリ本体と使い捨ての刃から成る「替え刃式カミソリ」を「Gillette Safety Razor (ジレット安全カミソリ)」として販売した。それは当初、「(eye-wateringly exorbitant (人を泣かせるくらいの、とんでもない値段)」だった。なにしろ、1週間分の平均労働賃金の 1/3 (現在の価格にして約2万円)もした。

 ところが、やがて替え刃式カミソリのパテントが切れると、同様の製品が他社から安い価格で販売されるようになる。これに対抗するために考え出されたのが、「two-part pricing」商法。カミソリ本体は安く売り、替え刃を高く売りつける方式だ。今では、どのメーカーの電動シェーバーにも採用されている「ubiquitous (どこにでもある)」販売方式。
 お陰で、消費者は新製品を買うべきか、それとも、替え刃を買う方が得なのかと、常に迷わされ、惑わされる。

 この商法のポイントは消費者に「安い他社の替え刃 (cheep, genetic blades)」を買わせないようにすること。そのための対策は 2つある。

・その1:legal (法的な対策)
 製品にパテントを設定することで、「商標のない安い代用品 (compatible alternatives)」のマーケット参入を阻止できる。しかし、パテントは永久には続かない。Nespresso のように、パテントが切れて、他メーカーの安い代用品コーヒーカプセルの出現に悩まされることになる。

・その2:technical (技術的な防衛策)
 ブランド純正製品 (genuine goods) 以外のカートリッジ、ゲームソフト、替え刃などは使えないように、製品本体にチップリーダーなどの細工を施す。例えば、カプセルコーヒーの製品に密かに埋め込まれたチップが、本物 (genuine)か偽物 (generic) かの判断に利用され、純正製品でなければ、機械は作動しない。

 さらに、「two-part pricing (2部価格制)」別名「razor and blades model (カミソリ・替え刃モデル)」には「switching cost (切替コスト)」の仕掛けがある。

 一旦、特定の商品の使用に馴染んだ人は、他の製品に変えるのがやっかいだ。ようやく時間を掛けて覚えたコピー機やゲーム機の使い方、あるいはKindle のソフト蔵書。これを全てゼロにして、他社の製品に切り替えるのは、誰にとっても「煩わしい (hassle)」。したがって、大方の人は、仕方がない(reluctantly) と、我慢しながら「現状どおり」を選択してしまうのだ。

 さらに、「brand loyalty (ブランド信仰)」が消費者の気持ちに追い打ちを掛ける。
 「少々価格が高いのは、性能の優れたブランド製品だから」の触れ込みで、Gillette の替え刃式カミソリは、パテントが切れた後も、その売り上げを伸ばした。もちろん、膨大な広告費を費やしたに違いない。

"Two-part pricing can be highly inefficient, and economists have puzzled over why consumers stand for it. The most plausible explanation is that they get confused."
"Either they don't realise they will be exploited later, or they do realise but find it hard to think ahead and pick out the best deal."

[ 2部価格制は社会にとって極めて非効率。それなのに、なぜ消費者は我慢しているのか。経済学者が長年、頭を悩ましてきた課題だ。これに対する最も妥当と思われる答えは、消費者が混乱していることにある。]
[ その製品を購入した消費者が、その後、ずうっと販売会社の食い物にされることに気づいていないか、あるいは、そのことに気づいていても、先のことまで考えるのが難しく、正しい選択ができていないのだ。] 

 なんとも、皮肉なことだ。「razor and blades model」の生みの親「Gillette」の理想は、「日用必需品 (life's necessities)」を限りなく安く提供し、equality (平等), virtue (徳), happiness (幸福) に溢れてた社会を作り出すことだった。 

 商売とは心理戦術を駆使した仕事だ。 巧妙に仕掛けられた罠 (traps) を見誤ると、「addiction( 商品中毒)」の穴に引きずりこまれる。                                       
                 (写真は添付のBBC Newsから引用。)


 

 

星の一生:宇宙では、すぐに消える泡のごとし! (BBC-Science & Environment, April 7, 2017)

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 宇宙空間を漂う水素 Hやヘリウム Heなどのガスや塵 (dust) は、やがて重力の作用を受けて集まり出し、分子雲(暗黒星雲)を形成する。

[ その巨大な分子雲が自らの重力によって収縮し、崩壊を始めると、星が誕生する。オリオン座分子雲 1 (OMC-1) は、地球から 1,500光年の彼方の宇宙に広がる領域、そこではたくさんの若い星々が誕生している。]
[ およそ 500年前、これらの原始星が重力によって互いに引き合い、近づきだした。そして、2つの原始星が接触するか、あるいは真っ正面から衝突して強烈な爆発を引き起こし、ガス・粉塵を毎秒 150km以上のスピードで宇宙に噴出した。]

"Stars are born when a massive cloud of gas starts to collapse under its own gravity. At a distance of 1,500 light years from the Earth, a number of very young stars began to form in a region called the Orion Molecular Could 1, (OMC-1)."
"Gravity pulled these proto-stars closed at increasing speed until about 500 years ago, two of them either grazed or collided head on, triggering a powerful explosion that hurled gas and dust debris out into space at more than 150km per second."

  この爆発の兆し (hints) は、2009年に観測されていたが、今回、チリのアタカマ砂漠に建設された「Atacama Large Millimeter/submillimeter Array, Alma (アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計、アルマ望遠鏡)」によってその爆発の瞬間の映像が捉えられ、高解像度で分析された。

 それまで暗く、穏やかだった「育星雲 (stellar nursery)」に突然、爆発が起こり、膨大なガス・塵のジェット流が星間宇宙空間 (interstellar space) に飛び散った。Colorado大学の John Bally 教授らの研究チームは、この爆発で発生したジェット流の構造、飛散したガスの種類、その速度などを解析し、研究結果を「Astrophysical Journal」に発表した。

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 巨大な星雲では、核融合反応が始まる前の、ごく初期の「原始星 (proto-stars)」がたくさん生まれるという。それは、川の流れの泡のようだ。生まれてはやがて互いに衝突し、消えて行く。核融合反応で輝く星はごくごく一部の星とか。

                 (写真は添付のBBC Newsから引用。)

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39光年の彼方に宇宙人?:地球によく似た惑星に大気層があった! (BBC-Science & Environment, April 6, 2017)

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 南の地平線上に輝く「帆座 (Vela Constellation)」に「super-Earth (巨大地球型惑星)」GJ 1132b が発見されたのは2015年。
 その後、イギリスの Keel大学 Dr John Southworth らの研究チームは、チリの「The European Southern Observatory (ヨーロッパ南天天文台)」にて、その惑星の観測、研究を続けて来た。そして、ついに、惑星 GJ 1132b が、水蒸気かメタンあるいはそれらの混合気体から成る大気層で厚く覆われていることを発見し、その詳細を「Astronomical Journal」に発表した。

 GJ 1132b と呼ばれる太陽系外惑星は、地球から35光年の宇宙の彼方にあって、その大きさは、地球の約 1.4倍。地上の温度は 370℃。水蒸気が濃く立ちこめた蒸し風呂のような世界が想像される。
 一方、地球上の生命体が耐えられる温度は 120℃。したがって、その惑星の環境で何らかの背生命体が生息しているのかは、極めて疑わしい。

 Gj 1132b が周回する恒星 (star) は、太陽系の太陽に比べて小さく、表面温度も低いため、薄暗く輝く。

 今回、分厚い大気層で覆われて、地球によく似た惑星が発見されたことから、この宇宙には、「extraterrestrial life (宇宙人、ET)」が人間と同じように望遠鏡を覗いている可能性が高くなった。
 それほど遠くない将来 (in the not-too-distant future)、地球の環境によく似た惑星が、もっともっと見つかるはずだ。

                 (写真は添付のBBC Newsから引用。)

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抗生物質の長期服用:大腸ポリープを誘発! (BBC-Health, April 5, 2017)

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 病気に罹ると、ほとほと困る。抗生物質 (antibiotics) の使い過ぎの恐ろしさが頭にある人は、だれでも、はじめは薬局に出向く。そして、それほど安くはない漢方薬(Chinese herbal medicines) を買い求める。
 ところが、大抵、症状が一向に良くならない。結局、病院で診断を受けて、抗生物質を飲む破目になる。

 では、この抗生物質を飲み続けると、どうなるか。
 USA の医療研究チームが看護師 16,600人に協力を依頼し、長期間にわたる大規模臨床試験「Nurse Health Study (看護師医療研究)」を実施した。
 被験者の一部に、2ヶ月以上、抗生物質を服用してもらい、服用しなかった被験者の健康状態と比較した。

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 その結果、抗生物質を飲み続けた被験者には、臨床試験後の診断で、大腸ガンにつながりかねない大腸ポリープ「adenome (アデノーマ、腺腫)」が数多く発生する傾向にあることが分かった。しかも、40 - 50代の中高年層は、20 - 30代の層よりもポリープの発生する確率が高くなった。
 ただし、この研究では、どの程度のアデノーマが大腸ガンに発展したかについては、明らかにされていない。

 確かに、抗生物質は「細菌感染症 (bacterial infections)」に対して抜群の効果を発揮し、これまで多くの人命を救って来たことは否定できない。
 しかし、一方で

"Antibiotics fundamentally alter the gut microbiome, by curbing the diversity and number of bacteria, and reducing the resistance to hostile bugs."
[ 抗生物質は、腸内に生息するバクテリアの多様性やその数を大幅に減少させて、腸内の微生物叢を根本から変えてしまう。さらに、悪玉細菌に対しては、体の抵抗力を弱めてしまう。]

 加えて、抗生物質は、大腸ガンの「前兆 (precursors)」になりかねない、大腸ポリープの発生を促していることが分かったのだ。 

 ただし、チャリテイ団体「Cancer Research UK (英国ガン研究)」保健報道官 Dr Jasmine Just が BBCに語ったところによると、

 『この USA研究グループが医学雑誌「Gut」に発表した内容は、極めて初期段階の研究結果であり、そこから明確な結論を引き出すのは時期尚早。抗生物質を処方されている患者は、すぐに服用を中止することなく、心配がある場合は主治医に相談すること』。

 さて、結論:抗生物質は「諸刃の剣」であることを認識すること。Dr Jasmine は掛かり付けの医者に相談するようにと勧めるが、果たして、じっくり患者の話を聴いてくれる、あるいは信頼できる医者など、今どき居るのだろうか。

                 (写真は添付のBBC Newsから引用。)
        

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イギリスのEU離脱Brexit:地質学的には15万年前に完了! (BBC-Science & Environment, April 4, 2017)

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 イギリスは 3月 30日、EUからの離脱手続きを正式に開始した。EU諸国を相手に、その離脱交渉は難航するものと見込まれている。
 ところが、科学雑誌「Nature Communications」にイギリスの May 首相も、思わずため息をつくような事実が発表された。「Imperial College of London」大学の Sanjeev Gupta 教授らの研究結果によると、「Great Basin (グレート・ブリテン島)」は、地質学的には約 15万年前、ヨーロッパ大陸から完全に切り離されていたのだ。

 今から約 50万年前の、氷河期のまっただ中にあった時代には、イギリス南部 Kent (ケント州) の町「Dover (ドーバー)」とフランス北部の都市「Calais (カレー)」は白い岩chalk (チョーク) の陸橋 (land bridge) でつながっていた。その陸橋の北側には巨大な氷河湖 (glacial lake) が広がり、湖の岸辺にはヨーロッパのほぼ全域を覆っていた氷河の壁が立ちはだかる。
 時が過ぎ、約 45万年前頃になると、その氷河が溶け出し、氷河湖の水位が上昇する。そしてついに、氷河湖に湛えられていた水が陸橋を越えて溢れ出す。それは滝のように海に落下し、陸橋に沿って幾つもの滝つぼ (plunge pools) を形成した。

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 その後の約 15万年前、氷床 (ice sheet) の一端が氷河湖に崩れ落ちたためか、突如として大量の水が一挙に陸橋に襲いかかる。これによって陸橋は壊滅的な破壊を受け、完全に消え去ってしまった。地質学的に Great Basin を Europe から切り離す「決定的なイベント (defining event)」は、瞬時に終わったと思われる。

 数十年前、ドーバー海峡 (Dover Strait) のトンネル工事に先だって海底調査が実施された際、不可解な窪み (depressions) が多数発見された。岩盤の上に、深さ100m、直径数百~数㎞ の巨大な穴が、一列に並んでいたのだ。今回の Gupta 教授らの研究によって、その謎がすっかり氷解したと言える。

 しかし、イギリスは議会民主主義発祥の国。日本とは違うと思っていた。その国で、英語に「Brexit 」などと余計な単語を加え、無理やりEU離脱に国民を誘導したイギリスの政治家 (politicians) たち。なんとも「不可解かつ壊滅的なイベント (mysterious and catastrophic event)」が起きたものだ。
  もちろん、May 首相がこの論文あるいは「滝壺の痕跡 (scares)」を持ち出して、『15万年前、すでにイギリスはヨーロッパから切り離されていた』などと、どんなに主張としても、何の役にも立たないだろう。
                 (写真は添付のBBC Newsから引用。)

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酸化グラフィン膜で海水を淡水化:将来の水不足に備えて! (BBC-Science & Environment, April 3, 2017)

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 地球上には約14億km3の水がある。しかし、飲み水に利用できるのは、わずか 0.01%。国連の調査によると、2025年には世界の人口の 14% (12億人) が飲み水の不足 (water scarcity) に直面すると予想される。 
 人類はどうしても海水に水源を求めなければならない。ところが海水には約 3.5%の塩類が含まれていて、そのままではとても飲み水には向かない。
 そこで、海水の淡水化技術 (desalination Technology) が必要になる。現在、ほとんどの淡水化プラントでは、「逆浸透膜 (reverse osmosis)」法が採用され、水の分子だけを通して、塩化物は通さないポリマー中空膜フィルターが使用されている。ただし、この方法で海水から真水を得るためには、大気圧の 50倍以上の圧力を掛ける必要がある。

 この膜 (フィルター) にグラフィン (graphene) を利用する研究開発が進められている。
 2004年、世界で初めて Manchester大学が、その分離に成功したグラフィンとは、
                                                       
"Graphene comprises a single layer of carbon atoms arraged in a hexagonal lattice. Its unusual property, such as extraordinary tensile strength and electrical conductivity, have earmarked it as one of the most promising materials for future application."

[ グラフィンは、炭素原子が六方格子構造に並んだ単層シート。並外れた引張強度、導電率など特異な物理特性をもつことから、夢の素材としてその応用が期待されている。]
 これまでは、「chemical vapour deposition, CVD (化学蒸着法)」などで作られてきた。

 Manchester大学の Dr Rahl Nair らの研究グループは、多孔質の基板上で、単純な酸化処理 (simple oxidation) によって、「酸化グラフィン (graphene oxide)」を作成することに成功し、その研究の詳細を「Nature Nanotechnology」に発表した。
 酸化グラフィンは、制作スケールの「scalability (拡張可能性)」、制作コスト面からも、単層グラフィンよりも利便性が高いという。

 Dr Nair らが工夫した点は、酸化グラフィン膜の両面にエポキシ樹脂 (epoxy resin) を付着させ、水中で膜内の微孔が膨張しないようにしたこと。これで、フィルターの微細孔の大きさを正確に 1 nm (ナノメートル) に保てるようになり、水の分子は通過できるが、Nacl (salt molecules) は通過できない。なお、Naclは、水に溶けると、H2Oの分子を殻 (shell) のようにまとった形になる。

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 今後、この酸化グロフィンを実用化させるためには、中空フィルタ (capillaries) の耐久性 (durability)、塩類の付着性 (fouling)、海水に含まれる不純物 (微生物) の除去対策などの課題をクリアする必要がある。
                  (写真は添付のBBC Newsから引用。)

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火星の大気は太陽風で吹き飛んだ!:その新たな証拠 (BBC-Science & Environment, March 31, 2017)

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 アメリカ航空宇宙局NASAの「Mars Atomosphere and Volatile Evolution Mission (火星大気・揮発物質進化探査 Marven)」計画では、火星を周回する探査衛星 (satelite) と火星表面を走り回る探査機 Curiosity (キュオリシティ)」が火星の大気組成に関するデータを集積している。

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 この火星探査計画を主導する Bruce Jakosky 教授の研究チームが、火星の大気に含まれるアルゴン (argon) の同位対比を分析した結果、かって「古代の火星 (acient Mars)」は地球とほぼ同程度の分厚い大気層が存在し、その中にはかなりの二酸化炭素 CO2も含まれていたことが分かった。
 
 つまり、火星表面は、その温室効果ガスのお陰で温暖であったことになる。液体の水も「原始的な生命体 (nascent lifeforms)」も存在し得る環境だった。なお、詳細は科学雑誌「Science」に発表された。

 Jakosky 教授らが注目したのは、上層大気に数ppmの濃度で含まれているアルゴン。アルゴンは不活性気体 (noble gas) で、他の気体や火星表面の岩石と反応することはない。したがって、アルゴンが消失するとすれば、太陽から吹き付ける強烈な「荷電粒子の流れ(プラズマ流)」によって宇宙に飛ばされてしまったことになる。
 このとき、アルゴンの 2 種の同位体 (isotopes) 36Ar と 38Ar の質量の違いが、吹き飛ばされる量に関係する。軽い同位体はそれだけ宇宙に散逸する割合も多い。

 この解析結果が示したのは、数十億年の間に、太古の火星の大気の 80 - 90%が吹き飛んでしまったことだった。
 
 火星表面の精密な写真で確認されているように、太古の火星には水が流れ、「rever beds (河床)や、「flood plains (氾濫原)」、「dertas (デルタ)」もあった。そのことが、大気組成のデータからも裏付けられたのだ。

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 なお、探査機 Curiosity は Gale Creter 内で「persistent lakes (残存湖)」の証跡を発見している。

                    (写真は添付のBBC Newsから引用。)

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